早春の風物詩と言われて、「踊り食い」で有名なシロウオを思い浮かべる人はかなりの食通かもしれない。一般に踊り食いで有名なのは福岡の室見川である。しかし、この清水の地も昔は有名なシロウオ産地だった。東海道の名物にはいろいろあるが、その中で「由比のサクラエビに清水のシロウオ」と言われていたそうだ。現在でも由比のサクラエビは有名で、国内で漁獲できるのは駿河湾だけである。一方、シロウオと言うと、大分・山口・愛媛・三重・福井・新潟・青森など全国各地で細々と漁獲されているが、東海道では見当たらない。福岡も漁獲量が減少し、現在では大分、福井などから購入して地元産と称して食べさせている。
このシロウオは通常、海で生活しているが、産卵前に川を溯上し、下流域の砂礫底で巣を作って産卵する。その、溯上時期が 3月から4月にかけてであるために早春の風物詩となったわけである。各地で独特な漁獲方法によって漁獲されているが、清水ではその昔、巴川の河口で四手網によって漁獲していたそうだ。これを政財界の大物が毎年楽しみにしており、その時期にわざわざ清水まで来たそうだ。現在ではどうかというと、興津川などで意外にも復活可能なほど残っている。すこし工夫すれば漁獲対象物にまで増殖させることが可能である。全国へ出荷というほど大きな市場とはいかないが、早春の風物詩として、地域観光特産品としての価値は十分ある。シロウオが再び清水の観光名物になる日は来るのだろうか?
本講演では清水の地域資源復活を目的として、『シロウオの生態と増殖技法』などを概説する。
また、今話題になっている『マグロの陸上養殖』についても現状を一部紹介します。 |