第59回(平成22年度第2回)のご案内を差し上げます。 今回は、東海大学海洋学部より下記のような内容でご講演いただきます。最先端研究の内容を知ると同時に、研究者との交流も持っていただき、今後の企業活動に活かしてもらえればと考えます。多数のご来場をお待ちしております。
東海大学
講演1 『水中ロボット利用の可能性』
東海大学海洋学部船舶海洋工学科 坂上憲光 准教授
Keywords:水中ロボット,作業アーム,サンプル採取,琵琶湖実験 世界を見渡すと学術分野でも産業分野でも水中ロボットが活躍している.水中ロボットは,ダイバーによる潜水が難しい環境下で作業を行なうための重要なツールとなっている.具体的には環境,生物,地理・地質,考古学などを目的とした学術調査,石油などを含む海洋資源に関わる産業分野で利用されている. 本講演では最初に,日本で研究開発され,利用されている自律航行型の水中ロボットや生物模倣型の水中ロボットなどを紹介する.続いて,講演者自身が研究開発に携わっている水中ロボットについて説明する(下図).この水中ロボットは2本の作業アームと姿勢調節機構を持ち,従来の水中ロボットよりも器用な水中作業の実現を目指している.動画などを交えながら,これら機能の紹介や琵琶湖での実験についても紹介する.その他,現在の科学分野,産業分野を踏まえた上で,今後の水中ロボットの役割や可能性についても触れる.
講演2 『フグ毒は、確かに毒だが毒じゃない〜フグ毒の二重性〜』
東海大学海洋学部海洋生物学科 斎藤 俊郎 教授
Keywords:水中ロボット,フグ毒(Tetrodotoxin),デトリタス食物連鎖,必要物質,腸内細菌,代謝の変化 フグ毒(Tetrodotoxin,以下TTXと略記)と聞くと,多くの人が「フグ特有の恐ろしい毒」と思われよう. しかし近年,TTXは海洋細菌により産生され,食物連鎖を通じてフグ以外の種々の生物(主に巻貝 図1や ヒトデ 図2等の底生性無脊椎動物)に摂取・蓄積されることが分かってきている.そのため,TTX研究では「何故,フグ以外の多くの生物がTTXを保有するのか」,言い換えれば「TTX保有生物体内で,TTXが何に役立っているか」が新たな問題となっている. この問題解決に当たり,演者は「TTXは我々ヒトにとっては強毒であるが,TTXを保有する生物にとっては毒ではなく必要物質」との観点に立ってきた.根拠は,1993年に行った誘引効果実験の結果である.フグのいる水槽にTTXを設置すると,フグはTTXに誘引されかつこれを積極的に摂取する(図3)のである. それでは,フグに摂取されたTTXはどんな働きをしているのだろうか.これに関連して,当研究室では現在「フグ腸内のTTXが,フグ腸内細菌の代謝を変化させ未知の代謝産物を産生させている」との結果を得つつある.本研究についても紹介したい.
図1. TTX保有巻貝 ボウシュウボラ Charonia sauliae.
図2. TTX保有ヒトデトゲモミジガイ Astropecten polyacanthus.