日常生活でのインターネット利用が当たり前になるなど、現代社会においてICT
(Information and Communication Technology:情報通信技術)は欠かすことのできないものになっている。しかし、2011年3月11日に起こった東日本大震災では、東北から関東にかけての東日本一帯が甚大な被害を受け、建物や人的な被害だけではなく、電話や携帯電話などの通信網も多大な被害を受けることとなった。通信網の被害が軽微なところでも、停電のために通信ができない状態に陥った。
本講演では、東日本大震災によって情報通信インフラがどのような被害を受けたのか、被災地の情報通信環境の復旧がどのように行われたのか、ICTが東日本大震災でどのように役立ったのか、逆にICT活用によってどのような問題が発生していったのかなどを、講師の被災地での支援活動の経験を踏まえて説明し、防災に役立つ今後のICTの技術動向についても解説する。
『 弱くなった日本企業、元気な韓国企業 』 静岡県立大学経営情報学部経営情報学科 准教授 尹大栄氏
Keywords : 経営のエートス、国際競争力、事前・事後合理性
最近、日本企業に元気がない。パナソニック、ソニー、シャープの家電3社は合計で 1兆3000億円もの巨額な赤字(2012年3月期)を計上し、かつて世界トップの競争力を誇っていた日本の家電業界は崖っぷちに立たされている。 国内唯一のDRAM半導体メーカーのエルピーダはついに会社更生法の適用を申請し、事実上倒産した。 日本企業の競争力低下は液晶テレビや携帯電話、鉄鋼、造船などの業界にも見られ、自動車産業も以前の競争力が維持できなくなってきている。これらの産業分野は日本企業が最も得意としていただけに、問題は深刻である。日本企業の競争力低下がはっきりと目立つようになったのはバブル崩壊後であるが、バブル崩壊によって失ったのは競争力や資産価値だけではない。それまで日本企業の経営を支えてきた人々の気持ちというか、経営に対する基本的な姿勢、精神、あるいは規範とも呼ぶことができる「経営のエートス」が失われてしまったように思えてならない。
一方、韓国企業はとても元気である。とくに新興国(インド、中国、南米など)を中心とする海外市場での躍進には目を見張るものがある。アジアにおいても、国によっては韓国企業のブランドイメージが日本企業を凌駕し、Made in Japanの国際競争力の低下が著しい。韓国企業のアグレッシブさやハングリー精神は、1997年に発生したアジア通貨危機の際に刷り込まれた、「グローバル市場での競争に勝ち抜いていかなければ生き残れない」という強い危機感に支えられている。当時、生き残るためには「妻と子供以外はすべて変える」ことを韓国企業は迫られたのである。日本企業はアジア通貨危機のような劇的な危機を経験せずに、どのようにしたらJapan as NO1時代の繁栄と「経営のエートス」を取り戻すことができるのか、元気な韓国企業と比較しながら考えてみたい。