第92回(平成26年度第7回)産学官交流のご案内を致します。今回は静岡農業高校を会場に、大学研究者、企業、高校関係者が講演や発表を行います。講演者や発表者等と交流を持ち、今後の企業・農業関係者活動等に活かしてもらえば幸いです。ご参加よろしくお願いします。
静岡県立静岡農業高等学校
「食を守る最先端農業の紹介」
研究発表1 『地球温暖化から産地を守る〜植物成長調節物質を活用した新たな環境資材の開発〜』
静岡県立富岳館高等学校 農業クラブ
地球温暖化によりトマトの収量や品質が低下しています。私達は夏の高温化から産地を守ることに強く課題意識を持ちました。私達は環境ストレスに強い植物成長調節物質「2‐アザヒポキサンチン(AHX)」を活用して高温に負けないトマト生産はできないかと考えました。 トマトの種子に35℃の高温ストレスを与え、発芽率を調べたこところ、AHX区のトマトの発芽率は70%、無処理区の1.7倍の値を示し、AHX区の根はストレスを受けずに成長することが分かりました(静岡大学大学院農学研究科応用生物化学専攻・生物化学研究室協力)。 私達はAHXを取り入れた媒体として、地元・製紙業(富士宮市の主産業)の廃材・ペーパースラッジに着目、AHXチップ(1粒あたりの大きさ:1cm、質量:1g、ペーパースラッジを炭化させ、AHXを浸漬・乾燥処理)を考案・開発しました。 私達はAHXチップによる高温ストレス下でのトマトの養液栽培を行い、その結果、AHXチップ区の収量は無処理区に比べ増加が確認され、そのメカニズムを検討したのでご紹介致します。
研究発表2 『シイタケの菌糸成長を促進する食材の探索』
静岡県立科学技術高等学校 自然科学部
自然科学部ではシイタケの菌糸成長と子実体形成に関する研究を行っています。 シイタケの子実体の一部から菌糸を培養し、新たに子実体を形成させる期間を短縮できないかと考え、通常の方法より優れた培地の調製を試みることにし、様々な食材にその可能性を求めました。 その結果サツマイモ培地の成長が最も良いことが分かりました。今回の実験では、菌糸成長の速い、遅いは菌糸伸展開始までの時間の差によるところが大きく、一旦伸展が起こるとその後はどの培地でも同程度の速さで菌糸が伸展しました。これら興味深い成果をご紹介致します。
企業発表『食・農クラウドAkisai 豊かな食の未来へICTで貢献 〜農業を支えるICTとその事例〜』
富士通(株) イノベーションビジネス本部 シニアマネージャー 深谷 朋昭 氏
日本の農業は儲からないと言われていますが、他産業では当然の様に行われている生産工程管理、コスト管理、ノウハウの伝承が上手く行われていません。富士通では導入しやすいクラウド技術を活用し生産者目線で農業(路地栽培、施設園芸、畜産含む)の経営、生産、販売の見える化をサポートする、食・農クラウド Akisai(秋彩)をご提供。地域活性化の源泉である農業の体質強化に向けた地域のお手伝いをさせていただいております。 静岡県内では、株式会社鈴生様他でご利用戴いている他、弊社沼津工場内に実証実験農場としてAkisai農場を開設。今回は、食・農クラウドAkisaiの機能とユーザ事例を中心にご紹介致します。
講演『キノコが作物を育てる?! 〜フェアリーリングの化学的解明とそのフェアリー(妖精)の農業への応用の可能性〜』
静岡大学 グリーン科学技術研究所 教授 河岸 洋和 氏
公園,ゴルフ場,住宅街などで,芝が輪状に周囲より色濃く繁茂し,時には成長が抑制されたり枯れたりし,後にキノコが発生する現象が知られており,「フェアリーリング(fairy rings,妖精の輪)」と呼ばれています。1675年に発表されたフェアリーリングに関する最初の論述やそれに続く論文が1884年のNatureに紹介されて以来,そのフェアリーの正体(芝を繁茂させる原因)は謎のままでした。私たちはそのフェアリーの正体,つまり,芝を繁茂させる物質(フェアリー化合物)を明らかにしました。 フェアリー化合物は試した植物全ての生長を制御し,圃場試験においてコメやコムギの収量を増加させました。私たちはフェアリー化合物の実用化もひとつの目標として様々な検討を行っています。 この研究の発端から,最新のデータまでをご紹介致します