第96回(平成27年度第4回)産学官交流のご案内を致します。 今回は静岡英和学院大学短期大学部にご協力いただき、下記内容の講演会を開催します。是非この機会に大学関係者・講演者と交流され、今後の事業活動等にお役立ていただきますようご案内申し上げます。
静岡英和学院大学短期大学部
「感染症の流行と対策・健康寿命に貢献する栄養学」
講演1 『自然環境と感染症・微生物 』
静岡英和学院大学短期大学部 食物学科教授 金田一秀氏
Keywords:環境微生物、海洋性細菌、感染症
日本人の海外渡航者は年間1,800万人を超え、その一方で海外からも旅行者や労働者として多数の人が日本を訪れています。2020年には日本でオリンピック・パラリンピック開催が決定し、日本の社会全体が世界とつながり、大きく国際化しようとしています。 この様な状況の中でこれまで、国内ではあまり知られていなかった感染症がテレビやニュースで聞かれるようになりました。例えば、昨年から今年半期の間だけでも、国内では蚊を介したデング熱の流行やマダニを介した重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、海外では西アフリカ地域を中心としたエボラ出血熱並びに韓国における中東呼吸器症候群(MERS)の大流行とこれまであまり知られていなかった感染症の名前を挙げる事ができます。これら感染症は突然出現したものではなく、その多くが人の移動や歴史と密接に関連しており、その流行地域の把握、媒介動物の地域分布、感染症法における病原体の類別分類と医療体制、病原体の危険度毎の管理体制並びに健康リスク管理などが非常に重要なトピックとなりつつあります。 この講演では、これら輸入感染症及び新興感染症の流行とその対策について紹介します。本学に着任後は、一貫して新規機能を有する微生物の探索をテーマとしており、主として静岡県沿岸の海洋性微生物の収集を行っております。講演の後半では、駿河湾沿岸を由来とする海洋性細菌の取得方法についても紹介できればと考えております。
<略歴> 1994年静岡県立大学大学院薬学部博士課程修了 薬学博士。1998年国立国際医療センター 適正技術開発・移転研究部流動研究員、1999年東京大学 分子細胞生物学研究所生理活性研究分野 未来開拓特別研究員を経て、2001年より現職。専門は自然環境と微生物並びに応用微生物。
講演2 『モデル生物「線虫」を用いた栄養学へのアプローチ』
静岡英和学院大学短期大学部 食物学科教授 佐々壽浩氏
Keywords:モデル生物、線虫、栄養学、神経科学
栄養素の機能や食を研究する栄養学は、健康寿命を伸ばすことに貢献できます。食べた栄養素の体内での働きは、生体分子が担っているが、動物を用いて調べることは、時間が長くかかり、予算的に難しい面があります。モデル生物は様々な生命科学の基礎研究に使われ、成果を上げています。味覚受容や栄養素の働きに関わる因子の同定や、個体レベルでの知見を得るためには、モデル生物を使うほうが有利です。最初に、モデル生物としての線虫の活用の利点を紹介します。線虫から得られた結果はヒトや動物へ応用することができます。線虫はヒトの疾患遺伝子に相当する遺伝子を持ち、疾患モデル生物として用いられています。脂肪蓄積を指標とした代謝実験や寿命に関わる因子の同定、行動解析からロコモ研究への活用の可能性や、神経機能に関する研究結果として、外界刺激に対する受容のしくみを紹介します。小規模な機器の導入で線虫を研究対象とすることができることから、異種分野での実験材料となりうる可能性を考えたいと思います。
<略歴> 1958年生まれ 金沢大学理学部生物学科卒業、金沢大学医学研究科博士課程修了 医学博士。線虫を用いて、タンパク質や遺伝子レベルの研究を行っています。理化学研究所や沖縄科学技術大学院大学では、器官形成の制御や、神経伝達や刺激受容の仕組みを研究してきました。ラットや培養細胞を使った癌研究や栄養学実験も行ってきました。主な担当授業科目は、生化学、生理学とバイオテクノロジーです。